[PDF] 妊娠時の安全性評価・授乳中のカテゴリー Contents


その研究は、医学誌「Canadian Medical Association Journal」2017年5月1日号(オンライン版)に掲載されました(注)。カナダ・ケベック州在住で1998年から2009年に自然流産した15~45歳の妊婦8702人を対象に調べたところ、マクロライド系抗菌薬のアジスロマイシン(先発品の商品名は「ジスロマック」)を妊娠中に服用した人の流産のリスクは服用していない人の1.65倍、クラリスロマイシン(同じく「クラリス」「クラリシッド」)なら2.35倍にもなる、という結果が出たというのです。


これらのマクロライド系抗菌薬は、日本の使用量が他国より多いことが指摘されています。そして実際、妊娠中にもよく使われています。「マクロライド系が流産のリスクになるなら、ペニシリン系かセフェム系を使えばいいのでは?」と思うかもしれませんが、問題はペニシリンやセフェムがまったく効かない感染症に対処せねばならないケースです。特に、それが多くの妊婦さんが感染する感染症だった場合、どうすればいいのでしょうか。次回、考えてみたいと思います。

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援する代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。 月額110円メルマガ<>を配信中。

「妊娠中も使える抗菌薬」の前提が崩れたら | 実践!感染症講義

とは言っても、重症化している(しそうな)場合は抗菌薬を用いなければなりません。そんなときは「妊娠中でも使える抗菌薬」を選択することになります。それはペニシリン系、セフェム系、マクロライド系の3種の抗菌薬です。クラビットという商品名で有名なニューキノロン系や、商品名・ミノマイシンなどのテトラサイクリン系は、生まれてくる赤ちゃんに奇形のリスクが生じることなどから原則妊娠中の使用は「禁忌」です。他の種類のものも「禁忌」もしくは「禁忌に近い」と考えなければなりません。しかし、このような説明を聞くと「なーんだ。妊娠していても使える抗菌薬が3種類もあるなら、そんなに心配しなくてもいいんじゃないの」と思った人もいるでしょう。ですが、この「妊娠中も使える」という前提が崩れたとすればどうでしょう。実は、最近、そのような内容の研究が報告されたのです。

妊娠中に一部の抗生物質を使用すると自然流産のリスクが上昇する可能性があると、大規模研究で示された。因果関係は明らかにされていないが、マクロライド系、キノロン系、テトラサイクリン系、スルホンアミド系、メトロニダゾールなどの抗生物質を使用すると、妊娠20週以前での自然流産リスクが2倍にもなりうると、研究グループは述べている。

研究著者であるモントリオール大学(カナダ)教授のAnick Bérard氏によると、「流産リスクは抗生物質の種類により異なり、比較的安全なものもあれば、そうでないものもある。ただし、妊婦は抗生物質による治療を止めるべきだと示されたわけではなく、たとえ使用したとしても流産の可能性は依然まれである」という。

一部の薬剤でリスクが高くなるのには、その作用が関連すると思われるという。例えば、テトラサイクリン系は胎児の歯を変色させ、骨の成長に影響を及ぼすため、妊娠中の投与は推奨されない。キノロン系はDNAに影響するとの動物実験データもある。一方、ニトロフラントイン(nitrofurantoin、国内未承認)は比較的安全であり、妊娠中によくみられる尿路感染症の治療に適すると考えられる。また、ペニシリンもよい選択肢であるという。


妊娠中と同様、授乳中に内服した薬の影響についてもよく問い合わせがあります。現在の ..

クラリス(一般名:クラリスロマイシン)とはマクロライド系の抗生物質です。従来のマクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンを改良してできたものであり、ニューマクロライドともいわれています。抗生物質の代表といえるのはβラクタム薬(ペニシリン系、セフェム系等)ですが、マクロライド系も肺炎球菌をはじめとするグラム陽性菌、インフルエンザ菌や百日咳菌など一部のグラム陰性菌、嫌気性菌、非定型菌のマイコプラズマやクラミジア、マイコバクテリウムなど多くの細菌に対して効力を発揮します。いろいろな細菌に有効なので、呼吸器系の領域を中心に多くの診療科で処方されています。多くは咽頭炎・肺炎・中耳炎などに対する処方です。消化器領域ではピロリ菌の除菌薬としても数多く処方されています。皮膚科領域においては、感染を伴う、表在性/深在性皮膚感染症、リンパ管/節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肛門周囲膿瘍などの疾患に対して選択されることがあります。

妊娠中期及び後期のラットに5mg/kgの14C-クラリスロマイシンを経口投与したところ、妊娠中期の全胎仔中濃

今回の研究では、抗生物質が及ぼす影響を明らかにするため、カナダ・ケベック州の15~45歳の妊婦コホートのデータを用いて、8,700人の自然流産の症例を、妊娠週数および妊娠した年を一致させた8万7,000人強の対照群と比較した。

妊娠中・授乳中の女性でも、しばしば薬物による治療を必要とすることが ..

話題を、妊娠中の抗菌薬使用の是非に戻します。うがい、手洗いをしっかりする、カンピロバクターなどの食中毒に注意する、けがを防ぐ、といった注意をしていても、細菌感染を完全に防ぐことは困難です。では、運悪く妊娠中に細菌感染を起こした場合はどうすればいいのでしょうか。

妊娠および授乳時のお薬について 妊娠中や授乳中の医療機関にかかる時 ..

その結果、流産した女性の約16%が妊娠初期に抗生物質に曝露していたのに対し、対照群では13%未満であった。マクロライド系抗生物質であるアジスロマイシン、クラリスロマイシンに曝露すると、流産リスクがそれぞれ1.65倍、2.35倍となり、キノロン系抗生物質であるノルフロキサシンでは4倍にもなることが分かった。

妊娠中に服用すると危険な薬というのは実際にはそれほど多いものでは ..

Norwitz氏は、妊娠20週までに抗生物質を処方された女性の多さに驚いたと話しつつ、「この研究の最大の欠点は、流産の原因で圧倒的に多い遺伝子の問題を考慮していない点である」と指摘する。Bérard氏も、「対象者が出生前診断を受けたのかは不明である。また、感染症の重症度が結果に影響を及ぼした可能性も否定できない」と認めているが、しかし、そのような差異だけでは今回の結果を完全には説明できないとしている。

妊娠中に医薬品を使用する場合,母体への影響だけでなく胎児への影響について十分注意

クラリスに最も特徴的なのは、一般的な抗生物質が効かないマイコプラズマやクラミジア、マイコバクテリウムなどの非定型細菌にも有効であることです。マイコプラズマは肺炎を引き起こすことで有名ですが、皮膚に感染して皮膚に治りにくい傷を作る原因になることもあります。またクラミジアは性感染症の原因となり、外陰部に痛みや痒みを引き起こします。マイコバクテリウムは皮膚の下で膿を作り、ジクジクとした傷を引き起こす原因菌です。これらはどれも稀な病気で抗生物質が効きにくいのが特徴ですが、クラリスは比較的よく効きます。またクラリスが改良される前の薬であるエリスロマイシンには胃酸によって効力が落ちるという弱点がありましたが、クラリスは胃酸の影響をほとんど受けません。体内にしっかりと吸収されるため、1日2回の服用で十分な治療効果が得られます。その他の特徴として、クラリスはアレルギーを起こしにくいとされています。βラクタム系の抗生物質に対してアレルギーがある人でも使用可能です。ただし他の薬と相互作用を起こしやすいので、飲み合わせには注意が必要です。

報が欠如している薬剤の妊娠中の使用に関する研究をおこなった。 ..

ですから、感染予防のことだけを考えるなら「妊娠すれば上の子と隔離」が最善となるのですが、これは非現実的です。ですが、子供から感染するリスクが高いことは知っておかねばなりません。その知識があると、妊娠前に、お母さんは少なくとも麻疹(はしか)、風疹、水痘(水ぼうそう)、おたふく風邪の抗体があるかどうかを調べなければならない、そして抗体価が低ければワクチンを接種しなければならない、ということがおのずから理解できます。「」シリーズで紹介してきたように、現在の日本では妊婦さんが風疹にかかると赤ちゃんに先天性障害が起きる可能性があることは周知されていますが、妊娠中に麻疹、水痘、おたくふく風邪に感染、罹患したときのリスクは、軽視されているように私には思えてなりません。

しかし、妊娠中でも可能な歯の治療もありますし、妊娠中にホルモンなどのバランス ..

妊娠中や授乳中の場合にはクラリスを使用できないわけではありませんが、気軽に内服できるわけでもありません。妊娠中に高容量のクラリスを投与すると胎児に心血管系の異常、口蓋裂、発育遅延等の異常が生じる可能性があると動物実験にて報告されています。また、クラリスは母乳にも移行します。病気の種類に応じて、治療を行うメリットと治療を行わないデメリットを比較・検討し、担当医と十分に相談して治療に当たりましょう。

成分名はクラリスロマイシンです。抗生剤にはさまざまな種類がありますがクラリス ..

クラリスは、併用注意薬(一緒に内服する場合は注意しなければならない薬)や、併用禁忌薬(一緒に内服してはいけない薬)が非常に多いです。ここには書ききれないほど多くの種類がありますので、常用薬がある方は医療機関を受診する際に必ず申し出るようにしてください。

[PDF] CQ28 妊娠中の性器クラミジア感染の診断,治療は?

妊婦さんに関することは、かかりつけの産婦人科に相談するのが基本ですが、状況によってはすぐに受診できなかったり、受診するほどでもないけれど心配で相談したいということもあるでしょう。当院は内科ですが、ときどき妊婦さんが受診されます。そんな方に役に立つように、妊婦さんのお薬の使用について、基本的な考え方を内科的な視点でまとめてみました。妊娠さんにおいて100%安全なお薬は無いわけですが、できるだけ危険や不安が少なくなればと思っています。
お薬の危険性を考えるにあたっては、もともとお薬とは無関係に全ての出産において先天的な異常が発生する危険があることを忘れないでください。問題はこのベースラインの危険に比べて、お薬がどの程度の危険度の上昇をもたらすかという点です。

マクロライド系抗菌薬は上気道・下気道感染症や性感染症などに広く使用されている。一方,これまでに妊娠中から

しかし風邪を含む飛沫(ひまつ)感染や空気感染をする感染症に対しては、うがい、手洗いだけで十分とは言えません。一般に、保育園、幼稚園のような幼児が集まる場所は「感染症の貯蔵庫」のようなものです。妊娠した時、終日自宅で過ごすことができればいいのですが、上の子供の保育園や幼稚園の送り迎えをしなければならないことがあります。この時に感染症をもらうのです。あるいは、上の子供が保育園などで感染し、その子供から自宅でお母さんが感染するケースもよく見られます。